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安部公房著の『箱男』を読んだよ

ネットショッピングと言えばAmazon。Amazonと言えばダンボールというくらい、世界に浸透したダンボール文化ですが、純国産のダンボールの雄と言えば、やはり、安部公房さんの「箱男」ではないでしょうか。


あらすじ

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ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されていく迷路。実験的書下ろし長編。

感想

この世に生まれて、ある程度の歳月を重ねてしまうと、素直さって失われてしまいますよね。

しかし、物事をより深く追求するには、ある種、子どものような素直さが大事なワケです。

そこで、原点に立ち返って、『箱男』なんですが、実はぜんぜん意味がわかりませんでした。

いや、意味わかんないとかダサいよ、なんでもいいから捻り出すんだ!、とか、自分を最大限に鼓舞してみたんですが、やっぱりよく解かんなくて…。

じゃあ、書かなければいいのに、ってのは、僕も思うんですよ。

でも、背景は掴めてるんです。見る、見られる、覗く、覗かれる、といった心理を、ダンボール箱は暗喩してるんですよね。昔なら世間の目、現代なら、監視カメラに対する不快感、みたいな話ですよね。

しかし、如何せんストーリーが追えなかった。最初はよかったんですけど、終盤になって、箱男の正体は?、手記の正体は誰?、キミわかるぅ?、みたいな展開になって、完全に突き放されてしまいました。

個々のエピソードは、存分に咀嚼できたのに、大筋がわからないのです。局地戦では優勢なのに、大局では惨敗みたいに。

なんだか悔しいです。



個人的に、面白いと感じたのは以下の一節です。

乞食に風邪をひかせる雨の色……地下街のシャッターが下りる時間の色……質流れになった卒業記念の時計の色……台所の流しの上で砕けている嫉妬の色……失業して迎える最初の朝の色……自殺志願者が買う最後の映画の切符の色……その他、匿名、冬眠、安楽死、そうした強アルカリ性の時間に腐蝕された穴の色。


もしも、僕に子があって、グレーのクレヨンの名前を聞かれたら「それは、乞食に風邪をひかせる雨の色だよ」とか言ってみたいです。


大きなダンボール

しかし、大っきいダンボールって夢がありますよね。わぁ、お家作れそう、って思ってしまいます。

あと、これに梱包してもらってクロネコに出してもらったら、東京まで1,080円で行けるかも、とか想像してしまいます。



昭和初期の日本人作家は、三浦綾子さんとか、好きで読んでたんですが、全体的に真面目なイメージがあったんですよね。

でも、「砂の女」と「箱男」を読んでみて、安部公房さんって、昭和なのにアグレッシブだな、良いセンスしてるなぁ、と思いました。

また他のも読んでみたいです。


安部公房著の『箱男』を読んだよ…という話題でした。