散るろぐ

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元をとりたいバイキング

きらびやかな明かりに照らされて、座り心地の良いイスに、窮屈なジャケットを着て座っている。ホテルのレストランは、床がピカピカに磨かれていて、僕は自分の靴が汚れているような気がした。

今日は、インスタ映えしそうなレストランに来ているよ。スマホで撮って見せびらかそうと思ったけど、嫉妬されるだけだからやめておこう。あした食べるお米がない人だっているんだから。


もう、お腹いっぱいだけど、まだ食べなきゃならない。食べ放題のバイキングは多く食べれば食べるほどコストパフォーマンスあがるんだよ。それがバイキング。でも、なぜバイキングなんだろう。

はるか昔、ヨーロッパ各地で暴れまくった北方の民が、食べ放題になっている。食料を略奪せよ、みたいな暗喩なのかな。あとでウィキペディアで調べよう。

それはともかく、もうお腹いっぱいなんだよ。だけどせっかく来たからもっと食べないと。そして僕は、単価の高そうなドルチェを探してテーブル周りをうろうろしている。

この「元をとりたい」という貧しい感情はどこからわいてくるんだろう。

たとえば、格安SIMのデータ通信でも、低速なら使い放題になる。すると、無闇に巨大な動画をダウンロードしたり、細切れのユーチューブを流したりしてしまう。払った月額料金を、余すことなく使い切るため、ムリをしてダウンロードしてしまうんだよ。そんなファイルいらないのに。

スポーツジムの会費でも、何回行っても月額料金は変わらない。すると、回数を増やせば増やすほど、1回の単価が下がるんだ。だから、ちょっとくらいの風邪で休んじゃいられない。這ってでもランニングマシーンに乗るんだ。

それもこれも「元をとりたい」という、惨めな感情に、脳が支配されているからなんだよ。

いつだったか、僕はシスターに「アンタは本当にケチなんだから」と言われてしまった。自分では計画的にお金を使って、ちゃんと貯金してる賢い人間だと思っていたのに。

僕はいつだって、元をとりたい。それは野卑で野蛮なバイキングのように、満たされることのない激しい欲求なんだ。

あの大きなスプーンで、ティラミスをごっそり略奪しなければならない。トングを二刀流で腰だめに構えて、イチゴとチョコのショートケーキを撃ち抜かなければならない。