散るろぐ

こころふるえる感情メディア

密告されてイスが強制撤去された

銀行から戻ってくると、僕のいつも座っているイスがなくなっていた。

「なんで僕のイスないの?」

軽いイラ立ちを覚えながら、近くの同僚に訪ねると、僕の留守中に社長がきて、撤去するように言われて、倉庫に片付けたという。

イスについては、僕もまえから心配していたから、いつかこうなるのは想定の範囲内だったけど、やはり、いざ撤去されると穏やかじゃいられない。

「それで、社長なんて言ってた?」

なるべく平静を保ちながら、同じ者に訪ねると、「イスにふんぞり返って寝ている店員(僕)がいる」というクレームが本社に入ったらしい。

その電話を受けた事務員が、また社長に密告した。負の連鎖だ。

ちなみにこちらが、ふんぞり返って寝ていたイス。


たしかに、接客の現場には、あまりふさわしいイスではない。でも、来店した客には、それなりの対応をしているからイスは本質じゃない。

それを、わざわざ本社へ電話して、ふんぞり返って寝ていると密告するヤツがいるとは、本当にゆるせない。誰かわかったらタダじゃおかないぞ。

そもそも、このイスは、古くなって壊れたイスの代替えとして、近所のゴミ置き場から拾ってきた物なんだ。「欲しい方あげます」って貼り紙もしてあったから、極めて合法的だし、会社の経費削減にも貢献している。

わざわざ車に積んで、ここまで運んできたのに、いまさら使うなというお達しは、本当に腹立たしい。

同時に、この密告を受けて、本社サイドで僕がどう思われているのか、急に心配になってきた。まさかクビなんてことは、ないだろうな…。

ただ、こんど社長に合ったら、何かしら言われるかも知れない。それを考えると憂鬱になる。なにも言わなければ、僕もなにも言わないけれど、言われたらそれなりの説明をしなきゃならない。クソ!

なにより、密告者に屈して、イスを撤去しなければならなくなった、という事実がゆるせない。

もしも、その密告者が、イスが消えているのを見たら、ザマヲミロと高笑いするだろう。遠くから、小さなまる椅子に座る僕を見て、さぞかし満足することだろう。

そもそも、会社は、密告などに屈してはいけない。なぜなら、個人的に恨みのある人物が、接客業についていたら「あの店員は態度が悪い」とクレームすれば、なんでも思い通りになると思ってしまうからだ。

そうだ。こんど社長に合ったらそういおう。僕を恨んでいる者がいると。ソイツが僕の不利になるような虚偽の通報をしているんだ。それですべてのつじつまが合う。

しかし、本当にだれが密告しやがったんだろう。こうなると、そこらへんの客がぜんぶ敵に見えてくる。こっちはお前らのために、日々、苦労して商品を揃えてやってるのに、ちょっと気に食わなかったら通報するのか?

雇われだと思ってナメてるのか?

直接言ってこいや。

ふざけるな。

考えていると、手がぶるぶるするほど怒りがこみあげてきた。

ぜったいに犯人を見つけてやる。そして大きな罪を償うことになる。


震えて待て。神の鉄槌がくだる日を