散るろぐ

ここが僕のアナザースカイ

何をすればいいのかわからない


あした、彼女が大腸の検査をするとかで、晩ゴハンは素うどんだった。甘辛く煮た豚ロースの薄切りや、ささがきのゴボウ、さっと湯通ししたワカメなんかは、胃の中に残ってしまう可能性があるからダメなんだって。

僕は、検査もなにもないから、具だくさんを食べても平気なのだけど、おなじように素うどんを食べた。少し物足りないような気もするけど、ふだんの晩ゴハンも、豆腐とかこんにゃくとか、あるいはひじきとか、ともかく、ダイエットを意識したメニューだから、特段の不満もなかった。それから、食べおわったドンブリを、台所の流しに置いて、水をジャーっと流しておいた。

さーてと。これからどうしよっかな、と思って、冷蔵庫を開けてみた。ドア側のポケットには、いつも通りに、牛乳とスムージーの紙パックがあって、缶ビールも何本かあった。

ふむ。

テレビの部屋へ行って、ソファーに腰かけたけど、なにか忘れているような気がする。また冷蔵庫を開けて、中身を確かめた。アイスは無いのか…。

今度は、洗面所へ行って、蛇口をジャーっと流してみた。そうだ、歯を磨こう。いつもより入念に磨いて、またジャーっとした。

また、ソファーに座ってスマホを見てみた。おや、充電が減っているな…。サイドテーブルのコンセントに、差しっぱなしになっているコードへ、スマホを繋いでみた。

ふむ…。

冷蔵庫はさっき見たな。スマホは充電しているし、ちょっと2階にあがってみよう。ふう、この程度で息切れするとは、これが老いといふものか。登り行く、階段、息を切らす僕、カラダはどんどん下り坂。

なにもないか。なにか忘れているような気がするけど、気のせいかな。カーテンをシャーっと開けてみたけど、とくに変わりはない。庭の草が伸びているな…。雨があがったら刈っておかないと。

そうだ、トイレに行っておこう。下におりてズボンを脱いで便器に座ってみた。さっきカバーを外したから、便座がヒンヤリとしている。腸の検査では、下剤をどんどん入れて、内臓をカラッポにするらしい。なにも出なかったけど、レバーを倒して、水をジャーっと流して、手を洗った。

そういえば、さっき洗濯機を回したんだった。もう洗い終わっていた。このまま忘れていたら、シワシワになって、また洗い直さなきゃいけないところだった。急いで干しておこう。

タオルを1枚ずつ、丹念にシワを伸ばしながら干していく。このまえテレビで、洗濯物は5回振ってから干すと、ふっくらした仕上りになると聞いて、それ以来、忠実に実行している。

パンッ、パンッ、パンッ、パパンッ。長方形の四隅をそろえて、きっちり干してみた。よし。これで乾いたら、完ぺきなタオルと言うもので、顔をふけるよ。仕上りが楽しみだ。早く乾かないかな。

洗濯カゴを元に戻して、再びソファーに座った。スマホの充電は、68%に回復していた。着実に蓄電していくリチウムイオンバッテリーとは、なんと頼もしいのだろう。なんと確かなのだろう。

ほのかに熱を帯びて、温かい基体は、100%の満充電へ向けて、ちゃくちゃくと前進している。一切の邪念なくエネルギーを蓄え、やがて放出してまた蓄える。なんと美しく純粋で尊い、エネルギーの再循環なのだろう。

闇雲にウロウロして、気まぐれにエネルギーを浪費する僕とは大違いだ。ただ座って、来るべきその時にこそ稼働すればいいのに。

なにをすればいいのか、わからない。