散るろぐ

ここが僕のアナザースカイ

告白のシーンに遭遇してしまった

僕は死角に潜んでいた。

いや、潜んでいたんじゃなくて、僕がいた部屋へ後から男女がやってきた。そこは、物置のような縦長いスペースで、僕はのんびりゲームしたいときには、その部屋の奥にある壊れたマッサージチェアを利用していた。

そこへ、あの子らがやってきた。僕が先にいたのだから、場所の占有権というか、隠れる必要もなかったのだけど、タイミングを逃してしまって、潜むハメになってしまったんだよ。

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ふたりは向き合うと、お互いの目を見ながら男の子がいった。

「オマエのこと、俺より好きなヤツはいない。オマエのことは、俺が一番理解している。だからオマエは俺と付き合うんだ」

僕が息を詰めていると、そんな会話が聞こえてきた。ある意味、完ぺきな理論だった。

しかし、女の子は言った。

「あたしのことオマエって言うのヤメて…」

そう言いながらも、女の子は、迷惑そうでも、嫌がっていもいないようだった。ただ男の子の熱意に困惑していた。

二人のことは、僕もよく知っていた。このスイミングスクールに通っている子らで、中学生のときから見かけていた。たしか男の子は高3で、女の子は高2だったっけ。

仲良くふざけていた、あんなに小さかった二人が、こうやって恋愛するようになるなんて…。時間の流れはとても早くて、僕にとっては短い時間も、あの子らにとっては、きっと濃密な月日だったに違いない。

「オマエのこと、一生守るから」

その言葉に、僕の心臓は跳ね上がって、マッサージチェアから宙に浮くような浮遊感があった。僕らを地上に縛りつける現実は、僕ら自身が作り出してしまった鎖なのかも知れない。

しかし、それも、女の子にはまったく響いた気配はなくて、その言葉は、ポッカリ空いた木のウロに語りかけているようだった。

二人は、練習の後、いつも笑顔で話していたし、ペアになってストレッチもしていた。なにより、小さい頃から一緒で、お互いのことを誰よりもよく知っていたはずだ。いや、知り過ぎていたのかもしれない。

重い沈黙は、女の子にかかってきた電話で、あっさりと終わりを告げてしまい「また明日ね」と言って、二人は出て行ってしまった。下手なキスシーンより、よほどドラマチックなシーンだった。


おそらく、二人が一緒になるのは、難しいだろうと思う。温度差があり過ぎるし、時間はむしろ二人を遠ざけてしまうだろう。

女の子にとって男の子は、他の誰かというよりも、今、何もかも決めてしまったら、将来というか、可能性のような未来が、すべて消えてしまうのではないか。

もしも、二人がお互いを知らずに、他人として大学のサークルなんかで会っていたら、お似合いのカップルになっていたかも知れない。

二人は本当に仲が良かった。気心も知れて、お互いに良家で育った子女だから、価値観も共有できたに違いない。

この先、女の子は、つまらない男に引っかかって純潔を失うのだろうか。男の子は、物足りなさを抱えながら、代替の恋愛をして雑に身近な女の子を抱くのだろうか。

そんなことを考えながら、僕はマインクラフトの丸石を積む作業に戻った。