散るろぐ

ここが僕のアナザースカイ

幼なじみに会えますか?

コンビニで買い物していたら、どこかから聞いたことのある音楽が流れてきた。

あれ、このメロディー、聞いたことあるけど、なんの曲だっけ? とか思っていたら、自分の携帯電話の着信音だった。ひさしぶりに電話鳴ったから、忘れちゃってたんだよ。

僕に電話をかけてくるのは、銀行の投資信託の担当者だけで「チルドさんの投資はマイナス15%になってますけど、どうします?フヒヒ」なんて、嫌な記憶を無理やり思い出させるんだ。二度とかけてくるな!

また、それがかかってきたと思って、低いトーンで電話に出ると、うちの姉さんからだった。

「チルちゃん元気してる?」

僕は「うん」とうなずきながら返事して続けた。「どうしたと?」

「今度ね、フミ子ちゃんが福岡に来るから、合ってご飯でも食べたいねって」

フミ子ちゃんというのは、僕と、僕の姉さんの一番古い友人で、たぶん3歳のころから遊んでいた、すごい幼なじみなんだよ。家が近所だったから、3歳から、小学校3年生くらいまで、毎日のように遊んでいたんだ。

とくに姉さんと同級生で、仲が良くて、いちばんの親友だったと思う。それから、僕たちは九州へ引っ越して、遠く離れてしまった。

あのフミ子ちゃんが、福岡へ来る。あれから、30年も経ったから、僕は太ったおじさんになり、姉さんは2児の母になった。フミ子ちゃんも、きっとお母さんになっているに違いない。

「チルちゃんとも一緒に会いたいって言ってたんだけど、どうする?行く?」

フミ子ちゃんか…。

正直、悩む。

だいたい、何を話せばいいかわからない。同窓会気分で会うべきなのか。いや、会いたい気持ちはあるよ。でも、僕は、あのころの僕じゃない。わぁ、おじさんになった。チルちゃんが太った!って、フミ子ちゃんに思われたくないんだよ。僕は、フミ子ちゃんの思い出のなかで、美しく死にたいんだ。

「まだ、もうちょっと先だよね。とりあえず保留にしておいて。近くなったら電話するから」

僕は、そう言って電話をきった。

本当にどうすればいいんだろう。小学校のころは、なんとも思わなかったけど、フミ子ちゃんはお嬢さんで、とても可愛かった。彼女のお父さんは、東京の体育系の大学で、柔道のコーチをしてる偉い人だったから、お家も立派で、お金持ちだった。

でも、お父さんはぜんぜん家に帰って来なくて、僕も一回しか会ったことがなかった。かなりお酒を飲んで、耳がまん丸になった、笑顔の優しい大男だった。

フミ子ちゃんと、僕の姉さんは、とても仲が良くて、いつも一緒に遊んでいた。うちの姉さんがお母さん役で、フミ子ちゃんはお父さん役、僕は飼い犬という設定で、よくおままごとをしたっけ。

僕は、なぜか犬の役に、強いこだわりをもっていて
、それ以外にはならなかった。セリフはワオーンだった。

予定日まで、あと、1週間しかない。

それまでに、参加するかどうか、返事をしなきゃならない。どうすればいいんだろう。

会うべきか、会わざるべきか…


とても動揺している